その表現大丈夫?景品表示法違反の二重価格をわかりやすく解説
「ジャパネットたかた」「アマゾンジャパン」が陥った二重価格のワナ
「ジャパネットたかた」「アマゾンジャパン」が景品表示法違反…そのニュースは、2020年末と2021年初に、まるで見せしめと思わせるかのように、同時期に舞い込んできました。
「ジャパネットたかた」は、景品表示法違反で消費者庁から5180万円の課徴金(罰則金)の行政処分を受け、「アマゾンジャパン」は措置命令の取り消し訴訟をしましたが、棄却されました。
日本を代表する通販企業の両社が消費者庁により罰則を受けたのは、私たちのような販売者にとっては大きなニュースだったでしょう。
特に、アマゾンジャパンは、出品者が任意に入力した情報を表示しているだけなので、自社は主体ではないと主張し、措置命令の取り消し訴訟をしましたが、それを棄却されたのは法律的に見て、今後影響が大きくなりそうなところです。
では、この両社はいったいどのような違反をしたのでしょうか?
いずれの企業も上場はしていないものの、ジャパネットたかたは、グループ売上が2020年12月期2405億円、アマゾンジャパンは売上が2020年(2020年1~12月)約2.2兆円と、非常に大きな企業です。
それくらい大きな企業であれば、法務担当がいてしっかりとチェックをしてそうですよね?だから、そのようなチェックが漏れてしまうような違反なので、よほどの違反内容だと思うでしょう。
しかし…実際は、非常にシンプルな違反内容でした。その内容が、、、
「二重価格」
です。
両社は、値引き前の価格を不当に高く表示し、実際の販売価格がより安価に感じるように宣伝し景品表示法違反に該当しました。
具体的に言うと、以下のような違反がありました。
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「ジャパネット通常税抜価格 79,800 円」
↓
「2万 円値引き」
↓
「さらに!会員様限定2,000円値引き」
↓
「値引き後価格 会員様特価 57,800 円」
引用元:https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms212_201223_1.pdf
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これだけを見ると、何を違反したのか分からないかもしれません。通常税抜き価格79,800円から、合計2.2万円を値引きすると「79,800円-22,000円=57,800円」の会員特価になるので違反していないように見えます。
しかし、、、ここに落とし穴がありました。
実は、ジャパネットたかたは「通常税抜き価格79,800円」の販売実績がなかったのです。景品表示法では通常価格(=過去の販売価格)を以下のように定めています。
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比較対照価格として主に用いられるのは、(1)過去の販売価格(2)他店の販売価格(3)メーカー希望小売価格の3種類です。
セール開始時点から過去8週間のうち、4週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます。
販売開始から8週間未満のときは、販売期間の過半かつ2週間以上の販売実績があれば、過去の販売価格として表示することができます
上記(1)や(2)を満たす場合であっても、実際に販売した最後の日から2週間以上経過している場合には、過去の販売価格として表示することは、原則としてできません。
販売期間が2週間未満のときは、過去の販売価格として表示することは、原則としてできません。
引用元:https://www.pref.gunma.jp/05/c0900170.html
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つまり、ジャパネットたかたは、この条件に該当しないにも関わらず、あたかも値引きをして「57,800円」になったとの不当な表示をしたとして罰則を受けました。
カンタンに言うと、この条件に該当しない限り通常価格での販売実績がないとみなされ、「57,800円」が通常価格と判断されるということです。
アマゾンジャパンも同様に、販売実績がないにも関わらず、「参考価格」の表記が誤解を招くとし、罰則の対象になりました。他にも、iQOSを展開する「フィリップ・モリス・ジャパン」も同様に二重価格で行政処分を受けています。
このように、両社とも非常にシンプルないわゆる「二重価格」で行政処分の対象になりました。消費者庁による行政処分の対象になるのは、あたかも人を騙すようなものかと思うかもしれませんが、実際はこのように、よくありがちなものが処分の対象になります。
特に、この「二重価格」は、実店舗やインターネット通販など、多くの企業が販売促進の一つとして行っているものでしょう。
販売数を伸ばすことに意識が偏ってしまったり、販売テクニックに意識が偏ってしまったりすると、実際には通常価格で販売した実績がないにも関わらず「このほうが売れるから」と考え、このような二重価格の表記をしてしまうかもしれません。
もちろん、その気持は分かります。ヒトは「限定性」「特別感」が一つの心理トリガーですので、そのトリガーを使わない手はありません。その心理トリガーを使うのは、有効な手段です。
しかし、こういった法律を理解せずに、安易に「こっちのほうが売れるから」「割引価格を出したほうが売れやすいから」「信号無視のようなもので見つからなければ良い」と考えてしまうと、このような景品表示法違反のワナに陥ってしまうでしょう。
もちろん、この割引価格などの二重価格は、景品表示法を守れば使用できます。ただし、この二重価格を有効かつ合法的に使用するには、景品表示法における通常価格(=過去の販売価格)の概念を遵守する必要があります。
ぜひ、このような法令を遵守しながら、この二重価格を活用し、通販の売上を伸ばしていきましょう。
<参考URL>
https://www.caa.go.jp/notice/assets/representation_cms212_201223_1.pdf
https://www.japanet.co.jp/shopping/support/info25.html